聞こえにくい家族との会話から「じまくん」を作った話

要約
聞こえにくい家族との日常会話を、画面いっぱいの大きな字幕で支えるiPhone・iPadアプリ「じまくん」。機能を増やすより「開くだけ」にこだわった理由、高齢者向けUI、保存しない設計、App Store公開までの開発を振り返ります。
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きっかけは、家族との日常会話でした

聞こえにくさのある家族と話していると、何度も同じ言葉を伝え直すことがあります。話す側も聞く側も悪くないのに、会話が少しずつ疲れるものになってしまう。

そこで考えたのが、目の前の会話をその場で大きな文字にするアプリです。会議の議事録を作るためでも、会話を記録するためでもありません。家族と食卓を囲むとき、病院や受付で短いやり取りをするときに、相手の言葉を読みやすくする。それが「じまくん」の出発点でした。

多機能にするより、「開くだけ」にしたかった

音声認識アプリには、録音、履歴、共有、要約など多くの機能を入れられます。でも、じまくんでは意図的に増やしていません。

使う人が毎回モードを選び、開始ボタンを探し、保存先を決めるような操作は避けました。家族が最初に文字サイズや背景色を整えておけば、使う本人はアプリを開くだけ。初回の許可が済んでいれば、そのまま聞き取りが始まります。

「何ができるか」より「迷わず使えるか」を優先した結果です。

高齢者向けUIで大切にしたこと

画面の主役は、常に字幕です。現在の発言を大きく表示し、一つ前の発言だけを小さく残します。状態は色だけに頼らず、「聞いています」などの文字でも伝えます。主要ボタンは押しやすい大きさにし、字幕は高いコントラストを保つようにしました。

文字サイズは5段階、背景は白・黒・セピアから選べます。日本語では横書きと縦書き、ゴシック体と明朝体も切り替えられます。iPadだけでなくiPhoneでも、縦・横や狭い画面に合わせてレイアウトが崩れないよう調整しました。

技術的に新しい表現よりも、読む人が疲れないことを優先しています。

じまくんの字幕画面。前の発言と大きな字幕を表示
実際の字幕画面。現在の発言を大きく、一つ前の発言を小さく表示します。

音声認識は交換できる構造に

実装はSwiftUI、Speech framework、AVFoundationを中心にしています。音声認識処理は画面から分離し、共通インターフェースの後ろに置きました。将来Appleの新しい音声認識技術へ移行するときも、UI全体を書き直さずに済む構成です。

実際の利用では、認識タスクの終了、電話やSiriによる割り込み、バックグラウンドからの復帰など、正常系以外の動きが重要になります。タスクが予期せず終わった場合は間隔を空けながら自動再接続し、短時間に失敗を繰り返さないよう制御しています。

字幕を表示している間は画面が自動で消えないようにし、停止時には必ず元へ戻します。地味ですが、日常で使い続けるために欠かせない部分でした。

会話を保存しない

じまくんにはアカウント、広告、分析SDK、独自サーバーがありません。音声ファイル、音声バッファ、字幕本文、翻訳結果も保存しません。

音声認識にはAppleのSpeech frameworkを使うため、端末や言語によってはAppleのサービスへ接続する場合があります。一方、翻訳にはAppleのTranslation frameworkを使い、必要な言語データを準備した後は端末上で処理します。

「保存しない」という方針は、機能を減らすためではなく、家族の会話に置くアプリとして自然な設計にするためです。

音声が字幕になったあと保存されず消えていくことを表した挿絵
会話はその場で字幕にし、音声・字幕・翻訳結果を保存しない設計です。

22言語の認識と、20言語の画面表示

最初は日本語の字幕に集中していました。その後、家族の会話は一つの言語だけとは限らないと考え、音声認識を22言語へ拡張しました。入力言語と翻訳先は別々に選べます。

アプリ自体の表示も、日本語を含む20言語に対応しています。表示言語は端末の設定に従うことも、アプリ内で固定することもできます。アラビア語など右から左へ読む言語では、画面全体の向きも切り替わります。

App Store公開まで

シミュレータのテストだけでなく、iPhoneとiPadの実機で、音声認識、画面復帰、文字の読みやすさを繰り返し確認しました。アプリアイコン、App Storeの説明文、スクリーンショットも、機能を誇張せず実際の使い方が伝わることを基準に作りました。

ダウンロード後は7日間、すべての機能を試せます。その後は月額制ではなく、一度だけの買い切りです。家族がまず設定を試し、本人に合うか確認してから使い続けられる形にしました。

これから

じまくんは、会話をすべて解決する道具ではありません。音声認識や翻訳は間違うことがあります。医療、契約、緊急時など大切な内容では、必ず相手へ確認する必要があります。

それでも、「もう一度言って」が少し減り、家族との会話を続けやすくなるなら価値があると思っています。これからも機能の数を競うのではなく、開いた瞬間に安心して使えるアプリとして磨いていきます。

よくある質問

Q. じまくんは何をするアプリですか?

目の前で話した言葉を、iPhone・iPadの画面に大きな字幕で表示する聴覚支援アプリです。会議録の作成ではなく、家族との日常会話や受付など、その場の短いやり取りを読みやすくすることに特化しています。

Q. 音声や字幕は保存されますか?

保存されません。音声ファイル、音声バッファ、字幕本文、翻訳結果は端末へ永続保存せず、独自サーバーにも送りません。アカウント登録、広告、分析SDKもありません。

Q. インターネット接続なしでも使えますか?

端末と選択した言語によって異なります。音声認識にはAppleのSpeech frameworkを使うため、インターネット接続が必要になる場合があります。翻訳は必要な言語データを準備した後、AppleのTranslation frameworkを使って端末上で処理します。

Q. iPhoneとiPadの両方で使えますか?

はい、iPhoneとiPadの両方に対応しています。縦向き・横向きや画面幅に合わせて、字幕と操作部分のレイアウトが切り替わります。

Q. 料金はいくらですか?

ダウンロード後7日間は、すべての機能を無料で試せます。試用期間の終了後は月額制ではなく、一度だけの買い切りで使い続けられます。価格はApp Storeで確認できます。

Q. 医療や緊急時の会話にも使えますか?

補助として使えますが、音声認識や翻訳は間違うことがあります。医療、契約、緊急時など重要な内容は、必ず相手へもう一度確認してください。

公式サイト:

App Store:

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