
Gitflow 実践ガイド:安定したリリースと効率的な開発を実現するブランチ戦略
はじめに
Gitflowは、明確なルールに基づいたブランチ戦略であり、特に品質と計画的なリリースを重視するチーム開発において強力なモデルです。本記事では、Gitflowの哲学から具体的なワークフロー、実践的なコマンドまでを網羅的に解説します。
1. Gitflowの哲学と5つのブランチ
Gitflowの中核には、ブランチの役割分担という考え方があります。これにより、本番環境の安定性を保ちながら、複数の新機能開発を並行して進めることができます。
Gitflowのフロー図

ブランチ戦略の詳細
Gitflowは主に5種類のブランチを使い分けます。
ブランチ名 | 目的 | 分岐元 | マージ先 | 寿命 |
---|---|---|---|---|
main | 本番環境のコード | - | - | 永続 |
develop | 開発の最新コード | main | - | 永続 |
feature/* | 新機能開発 | develop | develop | 一時的 |
release/* | リリース準備 | develop | main , develop | 一時的 |
hotfix/* | 緊急バグ修正 | main | main , develop | 一時的 |
1. main
ブランチ
- 役割: 常にデプロイ可能な、安定した本番コードを管理します。
- ルール:
release
またはhotfix
ブランチからのマージのみを許可し、直接のコミットは厳禁です。すべてのコミットにはバージョンタグ(例:v1.0.0
)が付与されます。
2. develop
ブランチ
- 役割: 次のリリースに向けた開発の統合ブランチ。開発の最新状態を反映します。
- ルール:
feature
ブランチのマージ先であり、release
ブランチの分岐元です。常にビルド可能であることが求められます。
3. feature
ブランチ
- 役割: 新機能や改善タスクを行うためのブランチ。
- 命名規則:
feature/user-authentication
やfeature/issue-123
のように、内容がわかる名前を付けます。 - ルール:
develop
から分岐し、開発完了後にdevelop
へマージ(Pull Request経由が一般的)された後、削除されます。
4. release
ブランチ
- 役割: リリース準備専門のブランチ。バージョン番号の更新や、リリース前の最終的なバグ修正などを行います。
- 命名規則:
release/1.0.0
のようにバージョン番号を付けます。 - ルール:
develop
から分岐し、準備完了後にmain
とdevelop
の両方にマージされます。このブランチでは新機能の追加は行いません。
5. hotfix
ブランチ
- 役割: 本番環境で発生した緊急のバグを修正します。
- 命名規則:
hotfix/1.0.1
やhotfix/security-vulnerability
のように命名します。 - ルール:
main
から分岐し、修正完了後にmain
とdevelop
の両方にマージされます。
2. 実践的ワークフロー
新機能開発フロー (feature
)
- ブランチ作成: 最新の
develop
からfeature/my-new-feature
のようにブランチを作成します。 - 開発とコミット: 機能開発を行い、適切な単位でコミットします。コミットメッセージは
feat: 新機能の追加
のように規約に従うと良いでしょう。 - マージ: 開発が完了したら、
develop
ブランチへPull Requestを作成し、レビュー後にマージします。マージ後、feature
ブランチは削除します。
リリースフロー (release
)
- リリース準備開始:
develop
ブランチからrelease/1.2.0
のようにブランチを作成します。 - 準備作業: バージョン情報の更新や、リリース前の軽微なバグ修正のみを行います。
- リリース完了: 準備が整ったら、
main
とdevelop
の両方にマージし、main
ブランチにバージョンタグを付けます。
緊急修正フロー (hotfix
)
- 修正開始:
main
ブランチからhotfix/1.2.1
のようにブランチを作成します。 - 修正作業: 必要な修正を行い、コミットします。
- 修正完了:
release
フローと同様に、main
とdevelop
の両方にマージし、タグを付けます。
3. 便利なGitコマンド
Gitflowを運用する上で、よく使う便利なコマンドを紹介します。
基本操作
マージとリベース
取り消し・修正
stash(一時退避)
4. Gitflow vs. GitHub Flow
どちらのフローが適しているかは、プロジェクトの性質やチームの規模によって異なります。
項目 | Gitflow | GitHub Flow |
---|---|---|
適したチーム | 大規模(5名以上) | 小〜中規模 |
リリース頻度 | 週〜月単位の定期リリース | 毎日・随時の継続的デプロイ |
特徴 | 安定性と計画性を重視 | スピードとシンプルさを重視 |
ブランチ | 複雑(5種類) | シンプル(main + feature) |
どちらを選ぶべきか?
- Gitflow: 厳格な品質管理が求められる大規模プロジェクトや、パッケージソフトウェアのように明確なバージョン管理が必要な場合に適しています。
- GitHub Flow: 迅速なイテレーションが求められるWebサービスや、CI/CDを前提とした小規模チームでのアジャイル開発に適しています。
まとめ
Gitflowは、その規律あるワークフローによって、大規模なプロジェクトに安定性と秩序をもたらします。
- 利点: 明確な責務分離、効率的な並行開発、計画的なリリースによる品質保証。
- 成功の鍵: チーム全員の理解、ツールの活用、CI/CDによる自動化。
習得には少し時間が必要ですが、Gitflowの原則を理解し、プロジェクトの特性に合わせて適切に運用することで、開発プロセスはより堅牢で予測可能なものになります。