
ブログ記事の中に小さなWebツールを埋め込んでみたところ、思った以上に反応がありました。
ソーラーパネルに興味がある人は多い。
でも、実際に知りたいのは「太陽光発電とは何か」ではなく、
「自分の地域で、どれくらい発電するのか」
「300Wパネル1枚で意味があるのか」
「防災用のポータブル電源と組み合わせるなら足りるのか」
でした。
そこで、記事内の補助ツールではなく、ブラウザでそのまま使える独立ページとして ソーラー発電量チェッカー(SPGC) を作ることにしました。

きっかけは「このソーラーパネル、不良品?」という不安だった
ポータブル電源メーカーの製品ページでは、よく次のような説明を見ます。
100Wのソーラーパネルなら、晴天時に80Wくらい出る。5時間当てれば400Whくらい充電できる。
この説明自体は間違いではありません。条件が良ければ、そのくらい出ることもあります。
ただ、実際に買って使ってみると、製品ページの数字とかなり違うことがあります。するとユーザーは「自分のソーラーパネルは不良品なのでは」「初期不良なのでは」「もう壊れているのでは」と不安になります。
ブログにも、ソーラーパネル関連の質問やコメントがかなり届いていました。おそらく500件近くはあると思います。
その中で見えてきたのは、製品ページの理想的な数字と、実際に自宅やキャンプ場で使ったときの数字の差が、不満や不安の原因になっているということでした。
でも、発電量はソーラーパネルの性能だけで決まるわけではありません。
同じ100Wパネルでも、松本のように日射条件が良い場所でレビューすれば「80Wどころかもっと出た」となるかもしれません。一方で、青森や北陸のように曇りや冬の日射条件が厳しい地域では、「全然出ない。この製品はダメだ」と感じるかもしれません。
どちらも、パネルだけの問題ではありません。
地域の日射量、季節、方位、傾斜角、影が入る時間、ベランダの向き、設置場所の周辺環境。こうした条件がかなり大きく効いてきます。
だから最初に作りたかったのは、製品を良く見せるツールではありませんでした。
むしろ、買う前に期待値を少し現実に近づけるツールです。
「自分の地域なら、100Wのうち半分くらい出れば十分かもしれない」と思って買えれば、実際の発電量とのズレは小さくなります。
期待値が合っていれば、必要以上にがっかりしなくて済みますし、すぐに不良品だと疑わずに済みます。
この問題意識が、今回のツールの出発点でした。
最初の課題は「情報が薄い」ことだった
初期案では、NEDOのデータ1
をもとにしつつ、地域分類や説明文の生成をAIに任せる方向で考えていました。
ただ、触ってみるとすぐに限界が見えました。AIが返す分類はそれっぽいのですが、地点ごとの違いが浅く、発電量ツールとしては判断材料が足りません。
たとえば「九州は発電に向いています」と言われても、読者が知りたいのはそこではありません。
知りたいのは、福岡なのか、熊本なのか、宮崎なのか。さらに言えば、同じ300Wパネルで年間何kWhくらい違うのか。全国的に見て良い場所なのか、普通なのか、厳しい場所なのか。
つまり、必要なのは「AIっぽい説明」ではなく、地点別の数字でした。
NEDOの地点別データを使う方針に変えた
そこで、NEDOのMONSOLA-11データを使い、ZIP内の地点別データをアプリ用に変換しました。
今回のアプリでは、全国840地点分のデータを読み込み、地点・方位・傾斜角に応じた月別日射量を使って発電量を計算しています。
ここで意識したのは、全部をそのまま見せないことです。
データが多いほど正確そうには見えますが、ユーザーが見たいのは生データではありません。必要なのは、次のような判断です。
- 年間どれくらい発電するか
- 電気代にするといくらくらいか
- 発電が少ない月でも足りるか
- 自分の地域は全国的に見て良いのか
- 製品ページの発電例と、自分の環境で差が出てもおかしくないのか
そのため、アプリ側では月別発電量、最低月、防災時の目安、全国順位に変換して表示するようにしました。
さらに、方位や傾斜角、影や汚れによる損失も入れました。ここを入れないと、結局「パネル性能だけ」の話に戻ってしまうからです。
実際には、南向きにきれいに置ける人ばかりではありません。ベランダでは方位が固定されますし、屋根や庭でも昼に影が入ることがあります。性能表の数字より、こうした環境差のほうが効く場面もあります。
「地域を選ぶ」が想像以上に難しかった
地点別データを入れると、次の問題が出ました。
全国840地点をそのままプルダウンに入れると、選ぶのが大変です。
特に九州や北海道のように地点数が多い地域では、スクロールするだけで疲れます。便利にしたつもりが、入口で面倒になってしまう。
そこで、地方フィルターと地点名検索を追加しました。
今は「九州」を選ぶと九州の地点だけに絞られ、さらに「熊本」「宮崎」のように検索できます。これは小さなUI改善ですが、体験としてはかなり大きいです。
開発していて感じたのは、データを増やすほどUIは難しくなるということです。情報量を増やすだけでは便利にならない。選びやすくする設計が必要でした。
役に立たない文章を、順位とレベルに置き換えた
途中で、一番「これは違う」と思った表示がありました。
最初は結果欄に、こんな文章を出していました。
標準的な発電条件です。設置角度、影、汚れ対策を詰めると結果が伸びます。
間違ってはいません。でも、読者にとってはあまり意味がありません。
標準的とは何と比べて標準なのか。どれくらい良いのか。自分の地域は有利なのか。不利なのか。
そこで、この文章をやめて、発電条件レベル・全国順位 に変えました。
たとえば熊本なら、標準条件で次のように表示します。
このほうが、読者は一瞬で判断できます。
「おすすめです」と言うより、「全国840地点中118位です」と出すほうが強い。ここはこのツールの価値が一段上がったポイントでした。
防災用途では「逆算」が必要だった
ソーラー発電量は、年間発電量だけ見ても実用判断ができません。
防災やポータブル電源用途では、むしろ大事なのは「発電が少ない月でも足りるか」です。
そこで、最低月にほしい電力量を入力すると、同じパネルが何枚くらい必要かを逆算する欄を入れました。
たとえば「最低月に1日1kWhほしい」と入力すると、現在のパネル条件で何%カバーできるか、同じパネルなら何枚必要かを出します。
これは発電量を見る機能ではなく、生活側から逆算する機能です。
ソーラーに詳しい人は日射量やkWhを見れば判断できますが、多くの人は「スマホを充電したい」「照明を使いたい」「冷蔵庫を最低限動かしたい」から考えます。そこに合わせる必要がありました。
無料公開にした理由
このツールは無料で公開しています。
理由はシンプルで、NEDOの公開データを参考にしたツールだからです。データそのものを使って直接課金するのは、趣旨として違うと感じました。
その代わり、Powerbanksの記事やプロダクト比較の入口として使えるものにしたいと考えています。
読者にとっては、地域別の発電量をすぐ確認できる。運営側にとっては、ソーラーパネルやポータブル電源の記事に来た人が、より具体的な検討に進める。
無料ツールですが、記事との相性はかなり良いはずです。
今はβ版として公開中
現在はβ版として公開し、フィードバックを集めています。
特に見たいのは、次のような点です。
- 地点選択は使いやすいか
- 発電条件レベルと全国順位は分かりやすいか
- 防災用途の逆算メモは実用的か
- ベランダ・屋根・ポータブル電源で見たい項目が違うか
- 結果を見て、次に知りたい情報は何か
今後は、使い道ごとに結果欄の見せ方を変えたいです。
節電目的なら電気代換算と年間発電量。防災目的なら最低月、蓄電池、必要枚数。ベランダ用途なら300W〜600Wクラスの現実的な運用。屋根用途なら1kW〜5kW規模の年間効果。
同じ計算結果でも、見るべき数字は用途によって違います。
作ってみて分かったこと
今回の開発で分かったのは、AIに作らせることより、何を判断材料にするかを決めることのほうが重要だということです。
実装の手はAIに借りられます。データ変換も、UIのたたき台も、細かい修正も速いです。
でも、「この文章は意味がない」「ここは順位で見せたほうがいい」「地域選択はスクロールさせるべきではない」「NEDOの趣旨を考えると無料公開にしたほうがいい」といった判断は、プロダクト側の仕事でした。
AIと作る個人開発は、丸投げではなく、壁打ちに近いと思います。
自分がユーザーの疑問を持ち、AIに実装を走らせ、出てきたものを見て「これは違う」と直していく。その繰り返しで、記事内ツールだったものが、β版のWebアプリになりました。仕様が固まったらスマホアプリ化を考えています。
まだ粗いところはありますが、ソーラーパネルやポータブル電源を検討している人が、最初の一歩として使えるツールにはなってきたと思います。
ぜひ触ってみて、分かりにくいところや欲しい項目があれば教えてください。