
仕事は終わったのに、頭はまだ勤務中。そんな人のために「こけこけ」を作りました
パソコンは閉じた。
Slackも見ていない。
仕事もしていない。
なのに、お風呂でも今日の仕事を思い返してしまう。布団に入っても明日の予定を考えている。休日なのに月曜日の仕事が頭に浮かでくる。
身体は休んでいるのに、頭だけまだ勤務中なんてことありませんか?
そんな「仕事から私生活へうまく切り替えられない時間」を減らすために、瞑想とキャラクター育成を組み合わせたiOSアプリ 「こけこけ」 をリリースしました。
基本機能は無料で利用できます。
「こけこけ」とは?
「こけこけ」は、仕事を終えても仕事について考え続けてしまう人が、短い瞑想や深呼吸を使って仕事から私生活へ意識を切り替えるためのアプリです。
瞑想そのものを上達することが目的ではありません。
目的は、
仕事ではない時間を、自分で選べる状態へ戻ること。
です。
1分〜3分ほど呼吸へ注意を戻し、セッションが終わると苔の生き物「こけこけ」が少しずつ成長します。

こけこけが育っていること自体を、
「仕事ではない時間へ戻ろうとしてきた自分の痕跡」
として残す設計にしています。
反芻思考の認知行動療法でも瞑想は用いられています。また仕事と私生活の切り替えのための境界線を引くことで効果があることは研究で報告されています。
もともとは「瞑想 × キャラクター育成なら面白そう」から始まりました
ここまで書くと、ユーザー課題から逆算して作ったかのように見えるかもしれません。
実際は全然違います。
開発を始めた頃の考えは、
- 瞑想アプリには既に大きな市場がある
- キャラクター育成アプリにも成功例がある
- 自分自身も3年以上瞑想を続けている
- だったら「瞑想 × キャラクター育成」は面白いのでは?
くらいでした。
市場調査もしましたし、既存の瞑想アプリに対するユーザーの不満も調べました。
それなりに考えて作っているつもりでした。
そして、そのまま開発を進めました。
育てるものが決まらず、何日も止まりました
最初はテラリウムを育てる案を考えていました。
瞑想との雰囲気は合う。
ただ、毎日眺めたり育てたりする対象として愛着が湧くかというと、どうもしっくりきませんでした。
もう一つ気にしていたのが、瞑想アプリ特有の「宗教っぽさ」です。
瞑想自体は好きなのですが、アプリとしてはもっとカジュアルにしたい。
禅っぽい静けさは少し残しつつ、宗教的な印象は出さず、かわいいけれど媚びすぎてもいない存在にしたい。
かなり悩んだ末に行き着いたのが「苔」でした。
派手ではない。
どこにでもいる。
だけど、よく見ると結構かわいい。
そこから苔の生き物「こけこけ」が生まれました。
現在はさまざまな姿のこけこけを育成できます。
6割くらい完成してから「これ、誰が使うんだ?」と気づきました
キャラクターも決まり、開発もかなり進みました。
体感では6割くらい完成していたと思います。
そこでUX設計について勉強していたとき、
「人は、いつこのアプリを開くんだろう?」
という当たり前の問いに答えられないことに気づきました。
誰が使うのか。
どんな瞬間に使うのか。
使う前にどんな状態で、使ったあとどうなってほしいのか。
そこが抜けたまま、
「瞑想するとかわいいキャラクターが育つ」
という機能を作っていました。
市場が存在することと、自分のアプリを使う理由が存在することは別です。
かなり作ってから、そこに気づきました。
このまま出したら、かわいいから数回触られて終わる可能性が高い。
「誰の何を解決するアプリなのか」がありませんでした。
作り直すのではなく、軌道修正することにしました
効率だけを考えれば、一度捨ててゼロから作り直した方が良かったかもしれません。
ただ、既に作っていた「こけこけ」というキャラクターには自分自身がかなり愛着を持っていました。
そのため、
キャラクターを残したまま、プロダクトの意味を作り直す
ことにしました。
そこで改めて考えたのが、
「瞑想をしたい人は、そもそも何が欲しくて瞑想するのか?」
ということでした。
多くの場合、欲しいのは瞑想そのものではありません。
リラックスしたい。
不安を減らしたい。
眠りたい。
仕事を忘れたい。
自分の生活へ戻りたい。
そこで自分自身の生活を振り返ると、かなり分かりやすい問題を抱えていました。
自分自身も、朝から寝るまでアプリのことを考えていました
個人開発をしていると、仕事を終える時間がかなり曖昧になります。
PCを閉じても、
「あの機能どうしよう」
「明日はあれを直さないと」
「このアプリ、売れなかったらどうしよう」
と考えている。
ご飯を食べても仕事。
お風呂でも仕事。
布団に入っても仕事。
会社員だった頃にも、休日なのに仕事のことを考え続けてしまう時期がありました。
つまり自分自身が、
「身体は仕事を終えているのに、頭だけ残業している人」
でした。
ここでようやく、
仕事が終わっても仕事のことが頭から離れない人が、私生活へ戻るためのアプリ
という現在の方向性が決まりました。
「考えないようにする」ではなく「何に戻るか」を決める
仕事について考えているとき、
「もう仕事は終わったんだから考えるのをやめよう」
と思っても、自分の場合はあまりうまくいきませんでした。
考えないようにしている時点で、既にそのことを考えているからです。
そのため「こけこけ」では、仕事を消すことよりも、
別のものへ注意を戻すこと
を重視しています。
基本的な流れはシンプルです。
- 今、頭に残っている仕事を一つ確認する
- 「これは明日の自分に渡す」と一旦置く
- 1〜3分、呼吸や身体へ注意を戻す
- 最後に「これから何に戻るか」を自分で決める
戻る先は、
- ご飯
- お風呂
- 家族との時間
- 趣味
- 読書
- 散歩
- 今日は何もしない
など、何でも構いません。
重要なのは、
「仕事をしない」ではなく「自分は今からこれをする」と決めること
です。
瞑想に失敗判定を作らないようにしました
瞑想というと、
「雑念をなくさないといけない」
「無にならないといけない」
と思われがちです。
でも、仕事について考えてしまっても問題ありません。
考えていることに気づいたら、もう一度呼吸へ戻る。
それだけです。
そのため「こけこけ」では、集中度のスコアを出したり、上手・下手を判定したりしません。
1分しかできなかった日も、それで完了です。
連続記録が途切れても、こけこけは枯れません
瞑想や習慣化アプリでは、
「7日連続!」
「30日ストリーク!」
といった仕組みがよくあります。
もちろん継続の動機としては有効だと思います。
ただ、このアプリを使う人は仕事で既に疲れている可能性があります。
そこでアプリからまで、
「昨日できませんでした」
と責められるのは違うと思いました。
そのため、何日休んでもこけこけは枯れません。
成長が後退することもありません。
再開した日に、また続きを育てればいい設計です。
数字ではなく「育ったもの」を記録にしたかった
通常の瞑想アプリなら、
「今月120分瞑想しました」
という記録になると思います。
こけこけでは、それをキャラクターの成長として残します。
久しぶりにアプリを開いたとき、
「この時期、このこけこけを育てていたな」
と思える。
数字よりも、生活の記憶として残るものにしたかったからです。
ホーム画面やロック画面のWidgetでも、育てているこけこけを見ることができます。
アプリを使っている数分間だけではなく、日常側に存在する「私生活へ戻る目印」のようになればいいと思っています。
課金設計も2回作り直しました
方向転換すると、課金設計も当然崩れました。
最初はキャラクターを中心に課金してもらう設計でした。
しかし、
「仕事から私生活へ戻りたい人は、本当にキャラクターに課金したいのか?」
と考えると、かなり怪しい。
ユーザーが払いたいのはキャラクターそのものではなく、自分の生活を取り戻すための価値のはずです。
そこで課金設計も2回見直しました。
現在は基本的な瞑想タイマー、基本のこけこけ、基本的な記録などは無料で利用でき、より状況に合わせた切り替え方や庭・Widgetなどを拡張するGarden Passを用意しています。
完成まで3か月以上。App Store審査でも何度か戻ってきました
最初のアイデアからリリースまでは3か月以上かかりました。
途中で大きく方向転換し、UXを組み直し、課金設計を見直し、App Storeの審査でも何度か戻ってきました。
「もっと完成度を上げてから出したい」
という気持ちもありました。
ただ、一人で考え続けても本当に正しいかは分かりません。
あるところで、
これ以上リリースを遅らせる方がリスクが大きい
と判断し、まず公開することにしました。
リリースしてからが、ようやく検証のスタート
今でも、この方向転換が正しかったのかは分かりません。
そもそも「こけこけ」というキャラクターを残すことにこだわらず、一から別のプロダクトを作った方が合理的だった可能性もあります。
UX設計もまだ改善できる部分が大量にあります。
でも、少なくとも以前の
「需要のある瞑想 × 流行しているキャラクター育成 = いけそう」
という状態から、
誰が、どんな瞬間に、何のために使うのか
を説明できるプロダクトには変わりました。
個人開発では、作っている途中で間違いに気づくことがあります。
今回学んだのは、
市場があることと、自分のプロダクトを使う理由があることは全く別
ということでした。
これからは実際の利用データや感想を見ながら改善していきます。
こんな人に使ってほしいです
特に、
- PCを閉じても仕事について考えてしまう
- お風呂でも今日の仕事を反省してしまう
- 布団に入ると明日の仕事を考えてしまう
- 休日なのに月曜日の予定が頭に浮かぶ
- 個人開発やフリーランスで仕事と生活の境界がなくなっている
- 瞑想をやってみたけれど続かなかった
という人に試してもらえたらと思っています。
「こけこけ」は現在App Storeで正式リリースしています。
基本機能は無料です。
よくある質問
Q. 瞑想をしたことがなくても使えますか?
使えます。
初心者向けの音声レクチャーも用意しています。無になる必要はなく、楽な姿勢で短時間呼吸へ注意を戻すだけでも利用できます。
Q. 毎日使わないといけませんか?
いいえ。
連続記録が途切れてもキャラクターが枯れたり、成長が後退したりすることはありません。
Q. どのくらい時間が必要ですか?
1分から利用できます。
仕事終わりなど、仕事と私生活の境界を作りたいタイミングでの利用を想定しています。
Q. 無料で使えますか?
基本的な瞑想タイマー、基本のキャラクター育成、基本的な記録などは無料で利用できます。
追加機能を利用できるGarden Passも用意しています。
最後に
自分自身も、このアプリを作ったから仕事を完璧に切り離せるようになったわけではありません。
普通に布団の中でアプリのことを考えている日もあります。
目指しているのは、
仕事のことを一切考えない人になることではありません。
仕事ではない時間を、自分の意思で選べる時間を少しずつ増やすことです。
そして、その時間の積み重ねが「こけこけ」の成長として残っていく。
そんなアプリにしていきたいと思っています。
実際に触ってみて、
「ここは良かった」
「ここは分かりにくかった」
「これはいらない」
などあれば、ぜひフィードバックをいただけるとうれしいです。
