
2025年は、まさに激動の1年でした。
年の初めには「Cursor」が流行し、多くのエンジニアがAIによるコード補完に懐疑的でした。しかし年末には状況が一変。「Claude Code」が主役の座を奪い、コードを「書く」のではなく「AIに任せて読む(あるいは最低限しか読まない)」スタイルが定着しました。「エージェンティック・コーディング(自律型AIによる開発)」が一気に成熟し、日常に溶け込んだ年だったと言えるでしょう。
では、2026年には何が起こるのでしょうか。
私が日々キャッチアップを続ける中で見えてきた本質的な変化について、18の予想を軸に解説します。これは私からの「お年玉」です。ぜひ最後までお付き合いください。
動画解説もしているので、こちらもご覧ください。
詳細に解説しています
第1章:AIエージェントの進化論 ——「80点」から「100点」への挑戦
2026年のAIエージェントは、単なる自動化ツールから、より確実で汎用的な存在へと進化します。
1. 縦の進化(品質)と横の展開(汎用化)
コーディングエージェントの進化には2つのベクトルがあります。
- 縦の進化: 0→1や1→10のフェーズは終わりました。次は「80点の成果物を100点にする」フェーズです。この残り20点を埋める道のりは長いですが、品質を極める段階に入っています。
- 横展開: コーディングで培われた「コンテキストエンジニアリング」などの知見が、他の業務領域へも応用され始めます。
2. 「非決定論システム」としての受容と深化
従来のプログラムは「1を入力すれば必ず12が返る」決定論的システムでした。対してAIは、確率的に答えを導き出す「非決定論システム」です。
99.8%の確率で正解を出しても、1000回に1回はミスをする。この特性を理解した上で、マルチエージェントによる評価や相互レビューの仕組みを導入し、「分布的収束」の精度を極限まで高めていく1年になります。
3. マルチエージェントによる評価システムの台頭
AIが生み出す無限の「打ち手」をどう選別するか。ここで重要になるのがシミュレーションと相互レビューです。CodeRabbitのように、複数のエージェントが互いに監視・評価し合うことで、単体では見落とすミスを防ぐシステムがトレンドになるでしょう。
4. LLMのマクロ対応能力が人間を超える
Gemini 3やOpus 4.5といったモデルは、すでに部分的なタスクだけでなく、マクロな視点(戦略や全体設計)を持てるようになっています。「スキル」という概念そのものを理解し、界隈の王道を予測して実装する。適切なハーネス(制御環境)さえあれば、**「モデルの方が人間より賢く、全体が見えている」**と実感する場面が増えるはずです。
5. 「バイブコーダー」でもプロ並みの開発が可能に
技術的な詳細を知らなくても、AIツールを感覚的に使いこなす「バイブコーダー」が、プロ並みのアプリを作れる時代が到来します。メタ認知能力が高まったAIに対し、細かい指示出しよりも「AIは自分より賢い」という性善説で向き合う方が、結果的に無限の可能性を引き出せるようになるでしょう。
6. モデルの「ロングラン能力」が加速する
Claude Opus 4.5が示したように、タスクを長時間実行し続ける能力(ロングラン)が向上します。
- 徐々に生じるズレの修正(追従性)
- ハルシネーションの抑制
- コンテキスト内での一貫性維持
これらを支える技術や、サブエージェントがメインを支える仕組みがさらに進化します。
第2章:覇権を握るのは誰か? —— モデルとツールの勢力図
2026年も激しい競争が予想されますが、私の分析では「あのモデル」の優位性が揺るがないと考えています。
7. Claude Codeが2026年上半期も覇権を握る
結論から言えば、Claude Code一強の時代が続きます。
モデル自体のメタ認知能力の高さに加え、サブエージェントやHooksといった「AIエージェントとして使うための機能(ハーネス)」の完成度が圧倒的です。Anthropic社には、スキルのマーケットプレイス化を含め、未来を実装する先見の明があります。
8. Opus 4.5の真価:ハルシネーションの少なさ
Opus 4.5は回答が無難に収束する傾向がありますが、これはエージェントとしては「ハルシネーションが少ない」という強力な武器になります。創造性が必要な時はGeminiなどをAPIで叩けばよく、自律的に動かすシステムの中心(頭脳)には、信頼性の高いClaudeが選ばれ続けるでしょう。
9. 汎用エージェントの波とManusの売り抜け
一時期話題になった「Manus」のような特化型サービスは厳しくなると予想します。なぜなら、Claude CodeとOpus 4.5が賢くなりすぎたため、誰でも汎用エージェントを作れるようになったからです。汎用が特化を飲み込む流れの中で、Manusが早めに売り抜けたのは賢明な判断だったと言えます。
10. スキルのマーケットプレイス化と「情報商材」
汎用エージェントが普及すると、「特定のドメイン知識をパッケージ化したスキル」の売買が始まります。同時に、「エージェントで一攫千金」といった怪しい情報商材も増えるでしょう。本物の知見と、単なる便乗商法を見極めるリテラシーが求められます。
11. ハイエンドPC需要の急増
ローカルで複数のエージェントを常駐させ、裏側で常に仕事をさせるスタイルが定着します。これに伴い、メモリを潤沢に積んだハイエンドPC(Mac StudioやM4 Max搭載機など)が必須ツールとなり、需要が急増するでしょう。
12. コンテキストウィンドウは「量」より「質」
1000万トークン対応!といった数字競争よりも、**「実用的な範囲(200K〜500K)でいかに精度を落とさないか」**が重視されます。注意力を維持できる範囲が広がれば、人間を超える複雑なタスク処理が可能になります。
第3章:ダークホースと既存勢力の攻防
13. オープンLLMの台頭(GLM 4.7など)
中国発の「GLM 4.7」などは、安価でありながらGemini 3 Flashに迫る性能を見せています。コストパフォーマンスを重視する場面では、これらオープンモデルやDeepSeekなどがAPI経由で積極的に採用されるようになるでしょう。
14. Gemini:ワンショット最強だがエージェントの核には?
Geminiは学習データの強さからか、一発の回答(ワンショット)やマルチモーダル性能は非常に優秀です。しかし、ハルシネーションの多さから自律エージェントの「核」にはなりにくい印象です。「全部入り」を狙うGoogleに対し、エージェント特化で切り開くAnthropicという構図が続くでしょう。
15. コンピュータユースの普及
画面操作を行う「コンピュータユース」の実用化が進みます。Claude in Chromeのように、ブラウザ操作などを自律的に行うツールやサービスが、サブスクなしで利用できる形で増えていくと予想されます。
16. SLMとAIOS:爆発的インパクトはまだ先
SLM(小規模言語モデル)やApple Intelligenceは「少し便利」な機能にはなりますが、破壊的イノベーションには至らないでしょう。一方で、OSレベルでAIがアプリを操作する「AIOS」レイヤーの進化には期待したいところです。
17. Cursorの苦境とLLMコスト戦争
GitHub Copilot(エコシステム優位)やClaude Code(モデルベンダー直系)に対し、Cursorは独自モデルを持たないため、コスト競争で不利な戦いを強いられます。機能面での優位性も薄れつつあり、2026年は正念場になるでしょう。
18. Grok:コストと速度のダークホース
注目すべきは「Grok」です。特に「Grok 4.1 Fast」は圧倒的に安く、性能も高い。サブスクリプションの価格競争になった際、「Grok Codeで十分ではないか?」という層を取り込み、台風の目になる可能性があります。
2026年を生き抜くための指針
ワークフローから「エージェンティック」へのシフト
これまでは「ワークフロー(手順書)」でAIを制御するのが主流でしたが、AIの知能が人間を超えつつある今、あえて制約をかけずに「目的」だけを渡して自律的に動かす(エージェンティック)方が、成果が出るようになります。N8NやDifyのようなツールから、Claude Codeのような自律型への移行が進むでしょう。
それでも「決定論」が残る理由:エネルギー問題
しかし、すべてのシステムがAIエージェントになるわけではありません。理由はエネルギー効率です。
1つの計算にかかる電力は、AIよりも従来のプログラム(決定論システム)の方が圧倒的に少ない。資源や電力コストがシビアになる中で、適材適所の使い分けが求められ続けます。
まとめ:AIエージェントが「同僚」になる日
2026年は、AIエージェントが私たちの日常に完全に溶け込む1年になります。
SNSの運用、動画制作、数値管理——これらを勝手に進めてくれる「同僚」のようなエージェントを、誰もが持てる時代です。
イノベーターやアーリーアダプターの間では、すでに「寝ながら仕事が進んでいる」状態が現実になっています。知っているか、使っているか。その差が、個人の競争力に直結する時代が到来しています。