
スマホアプリを作っていると、開発そのものより先に「公開の準備」が終わらない、という瞬間がある気がします。実装は一区切りついたのに、ストアに出すためにはまだやることが残っている。利用規約やプライバシーポリシー、問い合わせ窓口、サポートページ……。どれも“脇役”なのに、無いと前に進めないものばかりです。
この領域は、長いこと「各自がそれっぽく頑張る」世界でした。けれど最近、公開準備そのものを支援するサービスがいくつか出てきていて、開発者の作業の切り分け方が少し変わっていくのかもしれない、と思うことがあります。ここでは、よくある従来パターンと、新しく見えてきた選択肢を並べて眺めてみます。
まずは、いちばん“普通”だったやり方
個人開発や小さなチームだと、Notion でプライバシーポリシーや利用規約を公開して、問い合わせは Tally のフォームで受ける、という組み合わせがよく使われてきました。これはこれで合理的で、すぐ始められるし、文章も自分の手元で管理できます。必要になったときに少しずつ足していける柔らかさもあります。
ただ、公開が近づいてくると、別の感情が出てくることがあります。Notion のページを整えて、フォームを作って、ストアの審査に必要なリンクを揃えて……と進めていくうちに、「本来やりたかったのは、アプリの体験を磨くことだったはずなのに」と思ってしまう。もちろん、公開準備もプロダクトの一部ではあるのですが、気持ちの配分が難しい領域です。
“公開に必要なもの”を前提にした基盤:Launchfy.support
そこで最近見えてきたのが、アプリ公開に必要なページ群(規約、ポリシー、サポート、問い合わせ導線など)を、最初から“そういうもの”として用意できるサービスです。Launchfy.support は、まさにその方向のサービスに見えます。
この手の基盤の面白いところは、「全部を自動化する」というより、公開に必要な型を先に用意してくれる点です。コンテンツ作成そのものは必要になりますが、Markdown で書けるので、文章の下書きを AI に頼ったり、整形だけを任せたりもしやすい。自分の手で内容を把握しつつ、作成の面倒さを軽くできる、という距離感があります。
それに、文章さえ用意できれば、見た目がそれなりに整った状態で公開できるのは、地味に効いてきます。Notion でも整えることはできますが、公開用としての“見せ方”を毎回考えなくていい、というのは、公開間際の疲れているタイミングほどありがたいのかもしれません。
“一瞬でそろう”:Launch in Seconds
もう少し違う方向として、Launch in Seconds のような「アプリのタイトルや概要、簡単なヒアリングだけで、ランディングページと Privacy Policy / Terms of Service を自動生成する」サービスも出てきています。体験としてはかなり強くて、公開準備を“考えなくてよくなる”感覚に近い。開発の熱量が高いまま、公開へ滑り込めるのは魅力です。
ただ、その魅力の裏側で、少し気になる点も残ります。たとえば法的ドキュメントが、どんな前提で生成されているのか。内容を自分で十分に確認できるのか。現状は修正ができない、という話もあり、もし将来アプリの仕様や運用が変わったとき、どこまで追従できるのだろう……と考えてしまいます。
もちろん、これは「危ない」と言い切れる話ではないと思います。むしろ、公開準備のハードルを下げる方向性としては、とても現代的です。ただ、速度が上がるほど、こちらが“握れていないもの”も増える。その感覚だけは、どこかに残ってしまう気がします。
どれが正解か、というより「何を自分の手に残すか」
Notion + Tally、Launchfy.support、Launch in Seconds。並べると、単なる機能比較というより、「公開準備をどこまで自分で抱えるか」という価値観の違いに見えてきます。
Notion + Tally は、自由度が高いかわりに、考えることも作ることも自分に残る。Launch in Seconds は、考えることを極限まで減らせるかわりに、内容のコントロールが難しくなる可能性がある。Launchfy.support はその中間で、公開に必要な型やデザインは用意されつつ、文章は自分の手で持ち続けられる。Markdown で書ける、というのは、AI と組み合わせたときの“ちょうどよさ”にもつながっていそうです。
面白いのは、これが「技術の進歩」というより、「開発者の気持ちの置き場所」を変える話に見えるところです。公開準備は、やればやるほど本質から離れていくようで、でもやらないと前に進まない。その“最後の壁”に対して、いくつかの逃げ道が生まれてきた、と言ってもいいのかもしれません。
たぶん、公開はますます“開発の一部”になっていく
アプリを作る人が増えるほど、公開準備のコストは相対的に目立ってきます。だから、この領域がサービスとして切り出されていくのは自然な流れにも見えます。とはいえ、どの方向が主流になるのかは、まだ分からない気もします。自動生成が当たり前になるのか、あるいは「自分で握れること」を重視する反動が来るのか。
ただひとつ言えるのは、いまは少なくとも「公開準備は面倒だから我慢する」以外の選択肢が見え始めている、ということです。アプリを作っている最中の人ほど、公開直前にバタつく未来を想像しやすいと思います。そのときに、Notion だけではない手段がある、と知っているだけでも、少し気が楽になるかもしれません。
便利さとコントロールの間で揺れながら、どこを自分の手に残すか。公開準備の話なのに、結局それはプロダクトの作り方そのものの話にもつながっている気がして、少しだけモヤっとします。たぶん、そのモヤっとした部分が、今いちばん変わり始めているところなのだと思います。