「エンジニア」が「営業」という真逆の仕事にチャレンジして得た知見

要約
エンジニアが飲食店向けサービスの初営業に挑戦。「3秒で伝える」「ツッコミを味方にする」「陽キャより説明力」「データと仮説を使い分ける」など、論理的思考を活かした営業術を発見。無料プラン契約も獲得。エンジニアの強みは営業でも武器になることを実感した体験談。
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筆者の本業はエンジニアで、普段はAI推進などの仕事もしている。そんな自分が初めて営業に挑戦した話だ。この記事を読めば、論理的思考を活かしたエンジニアならではの営業の準備方法がわかるはずだ。

エンジニアとしてサービスを作ったら、次は売る番。でも、営業なんて初めてで、どう話せばいいか分からない…そんな不安を抱えながら、知り合いと開発した飲食店向けサービスを売り込みに行ってきた。何件か回って、実際に無料プランの契約にこぎつけることができたので、そこで学んだコツをシェアする。スタートアップのリアルな一歩を、エンジニア目線で振り返ってみる。

サービス説明は簡潔に:3秒で相手の心を掴む重要性

まず、サービスについて思ったよりも簡潔に説明する必要があるということを学んだ。入りでミスると全然そこから入っていかない。そもそもいきなり話しかける営業スタイルだったので、短い時間で「自分たちは何者か」「何のために話しかけているか」を3秒程度で伝える必要があった。その後「どんなサービスなのか」これも3秒で伝わるレベルまでまとめて簡潔に伝える。ここがかなり重要だということがわかった。初動で失敗したら、会話すら始まらない。

サービスを紹介する時に大事なのは、そのサービスのコアな魅力を本当に一言で伝えることだ。例えそこで全ての魅力が伝わらなくても「それって〇〇でもできますよね?」というツッコミがくるので、そこから「そうなんですよ、でもうちのサービスはここで差別化できてて」と返せばいい。世の中似たようなサービスは山ほどあるから、最初に差別化要素も説明しておかないと魅力が伝わらないだろうと焦ってしまうこともあるだろう。しかし、意外と人間の心理は「それ他のサービスと同じじゃね?いらねーよ」と即判断するわけではなく、「それと同じサービスならあるけど、おまえらはなんか違うの?」とちゃんと聞いてくれる。

だから初手で「突っ込まれないように全部盛り込もう!」よりも、ツッコミどころを残してもいいから、一言で伝わるところをうまく伝える方がそのあとの会話のラリーに繋げやすい。短くわかりやすく伝えることがとにかく重要なのだと感じた。このアプローチで、会話がどんどん深まった実感がある。

視覚媒体の役割と、会話の力が営業のベースになる

また、わかりやすく伝えるためにチラシも用意して持っていったが、ほとんど活躍することはなかった。チラシは漫画テイストでサービスの魅力を端的に伝えるような工夫もした。もちろん後から思い出してもらえる可能性も0ではないので、そういった視覚的な媒体もあったほうがいい。ただ、やはり最初相手の気を引くためにはシンプルに自分の言葉で伝えるのが効果が高かった。

ネットだと視覚に訴えるようなマーケティングが注目されがちだが、実地で営業する場合は基本となるのは会話なのだと実感した。そこがベースになってサポートとして視覚的に理解しやすい媒体があってもいいのだろう。だからやはり営業はコミュニケーションが重要になってくる。チラシは渡した後で「これ見て、後で連絡してね」って感じでフォローアップに使えたが、初動は口頭の説明が勝負だと思った。自分の言葉で説明することで、相手の興味を引き込める。

コミュ力の意外な形:陽キャより「わかりやすい先生」スタイルが効く

私的に意外だったのが、陽キャ的なノリと勢いのコミュニケーションというよりも、わかりやすい先生のような説明スキルの方が重要だったということだ。今回営業をかけた相手がほとんど経営者だったので、彼らも事業立ち上げの苦労をしている分、ある程度こちらに好意的に接してくれたということもありそうだが、ノリ良く話すよりも、親しみやすいトーンでしっかり説明できる力のほうが重要なのではないかと思った。

令和の虎のような番組を見ていても、出資してもらえる経営者はあらゆる角度からの質問攻めに耐えられるだけの回答力、説明力を持っている。その内容がよほど矛盾していたりおかしなところがなければ、出資者側と意見が食い違っても「おまえがそこまで調べ考えた上でその結論が出るなら面白い、その可能性にもかけてみよう」となっているケースが多い。実際、自分の営業でも、相手の質問に自信持って答えられた時が、信頼を勝ち取れた瞬間だった。しっかりとした説明が、相手の心を動かす。

とにかく営業に重要なのは、導入は端的に説明、トーンも明るく。ツッコミフェーズに入った時は自信を持ってガッツリ説明する。質問フェーズに入ると相手も聞く気になっているので、適度な長話にも付き合ってくれる。このフェーズを活かせば、深い議論に発展し、関係が一気に強まる。

データと仮説の使い分け:質問に詰まらない準備が信頼を生む

質問に対して提示できるデータがあればいいが、スタートアップの場合は実績がないので数字で語れないケースもあるだろう。その場合は「これは仮説だが」と前置きして、データがないことを突っ込まれないように振る舞った方がいい。基本的にこっちが質問に詰まることが相手にとって一番印象が悪い。つまり格下だと思われることは信頼を失う。なぜなら自分より格下相手に金を払おうとは思いづらいから。少なくとも特定の分野において「こいつらは俺たちよりも詳しそうだ、ナレッジがありそうだ」と思うから相手は金を払うわけで、そう思ってもらうためには、華麗に質問に答えられる必要がある。

だからデータをベースに回答できること、データはないけど自分たちの仮説としてアピールしたいこと、ここを徹底して切り分けて整理して準備することが重要になる。そして可能な限りそれらは言語化しておくべきだ。特に前準備として言語化した方が良いと思ったのは以下の点だ:

  • 自分たちが何者かということを説明するフレーズ
  • この商品についてのコアを一言で説明するフレーズ
  • 想定される質問とその回答の分類:データで示せるのか(例: 「市場調査で80%の店が注文ミスに悩んでいるデータがある」)、仮説として説得するのか(例: 「仮説だが、この機能で売上10%アップの見込み」)。

この辺りは事前に明文化しておくといい。この準備が、営業を成功させる基盤になるはずだ。

雑談 vs 本題直球:初対面営業の最適なアプローチ

一般的に営業というと雑談を入れてうまいこと相手と関係を築くという攻め方もたしかに効果はあると思う。しかし初対面の営業に関しては、いきなり本題に入ってできるだけ相手の時間を削らない方がいいと思った。だから陽気なノリのコミュ力よりも、陽気だけどロジカルに話せるくらいのキャラクターがおそらく最も効果的なのではないか。エンジニアの論理的思考がここで活きる。雑談は信頼を築いてからで十分だ。このバランスが、相手に本気度を伝える鍵になる。

まとめとこれから:営業はエンジニアの武器になる

エンジニアとして初めて営業を経験してみて、想像していたよりも成果を出すことができた。その場での自己改善を繰り返すことで、営業においても論理的思考と準備の重要性を実感した。まだ無料プランの導入段階だが、この経験を活かして次は有料化まで持っていけるように取り組んでいきたい。

全体の気づきを振り返ると:

  • 簡潔な説明で初動を制する。ツッコミを味方につける。
  • 会話が営業の核心。視覚はサポート役。
  • 説明力と自信が信頼を生む。データと仮説を整理。
  • 初対面は本題直球で、論理的に語る。

エンジニアの皆さん、営業は自分の強みを活かせる場だ。こうした気づきを参考に、チャレンジしてみてほしい。少しでも参考になれば幸いだ。

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