
Figma Dev Mode MCP Serverとは何か
この連携の核となるのが、Figmaが提供する「Dev Mode MCP Server」という機能だ。MCPは "Multi-purpose Code-generation Platform" の略で、その名の通り、多様なコード生成のためのプラットフォームとして機能する
具体的には、Figmaのデスクトップアプリ内でローカルサーバーを起動し、デザインデータをAIエージェント(この場合はClaude Code)にストリーミングで提供する仕組み。
これにより、AIはFigmaのデザイン構造、例えばレイヤー、コンポーネント、Auto Layoutの設定、デザイントークンなどをリアルタイムで理解し、それを基にコードを生成することが可能になる。
これまでの画像やスクリーンショットをAIに渡す方法とは、情報の解像度が全く違う。デザインの意図を汲み取り、再利用可能なコンポーネントとしてコード化したり、デザインシステムで定義されたトークンを適用したりと、より高度で文脈に沿ったコード生成が実現する
具体的な設定手順
設定は驚くほど簡単。いくつかのステップを踏むだけで、未来の開発環境が手に入る。
ステップ1 Figma Desktop Appの設定
まず、この機能はFigmaのデスクトップアプリでのみ利用可能。ブラウザ版では使えないので注意が必要だ。
Figmaのデスクトップアプリを開き、Figmaのデスクトップアプリの左上のアイコンから、基本設定を押し、「Dev Mode MCP サーバーを有効にする」にする
これで、Figma側でローカルサーバーが起動し、Claude Codeからの接続を待ち受ける状態になる
デスクトップアプリを通すので、Figma のトークンを発行する必要はない
ステップ2 Claude CodeにMCPサーバーを追加
次に、ターミナルを開き、Claude Codeに対して、先ほど起動したFigmaのサーバーを認識させるためのコマンドを実行する。
このコマンドは、以下の内容をClaude Codeに設定している。
claude mcp add
MCPサーバーを追加する命令--transport sse
Server-Sent Events (SSE) という技術を使って通信することを指定figma-dev-mode-mcp-server
これから追加するサーバーの識別名http://127.0.0.1:3845/sse
接続先のローカルサーバーのアドレス
一度この設定をすれば、再度実行する必要はない。
ステップ3 Figmaからコードを生成する
設定が完了すれば、あとはデザインからコードを生成するだけ。
- Figmaで、コード化したいコンポーネントやフレームを選択する。
- 右クリックメニューから
Copy as
>Copy link to selection
を選択する。(または、⌘L
のショートカットキーでも良い) - Claude Codeのプロンプトに、コピーしたリンクを貼り付け、どのようなコードを生成したいかを指示する。
例えば、以下のようなプロンプトが考えられる。
これだけで、Claude CodeはFigmaのローカルサーバーと通信し、デザイン構造を理解した上で、精度の高いコードを生成してくれる。
実践的な活用シナリオ
この連携は、様々な場面でその力を発揮する。
- 単一コンポーネントの生成 ボタンやカード、入力フォームといった基本的なUI要素を、一瞬でコードに変換する。
- セクション単位の生成 ヘッダーやフッター、記事一覧セクションなど、複数のコンポーネントから構成される部分もまとめてコード化できる。
- レスポンシブデザインのコード化 Figma上でAuto Layoutを駆使してレスポンシブなデザインを作成しておけば、その意図を汲み取ったメディアクエリを含むCSSを生成することも可能だ。
生成されるコードの質を高めるコツ
魔法のような機能だが、その効果を最大限に引き出すには、いくつかのコツがある。
Figma上でのデザインの作り方
- Auto Layoutの徹底 マージンやパディング、要素間の距離をAuto Layoutで定義しておくことで、CSSのFlexboxやGridを使った、よりモダンで堅牢なレイアウトコードが生成されやすくなる。
- コンポーネント化 デザインをコンポーネントとして整理しておくことで、生成されるコードも再利用性の高いコンポーネント形式になる。
- 適切なレイヤー名 レイヤー名がそのまま変数名やコンポーネント名に影響することがある。意味の通る命名を心がけることが、結果的にコードの可読性を高める。
Claude Codeへのプロンプトの工夫
- 具体的な技術スタックの指定 「Reactで」「VueとTypeScriptで」のように、使用したいフレームワークや言語を明記する。
- CSS形式の指定 「Tailwind CSSを使って」「CSS Modules形式で」など、希望するスタイリング方法を伝えることで、よりプロジェクトに合ったコードが得られる。
メリットとデメリットの整理
この連携の利点と注意点を、表にまとめておく
メリット | デメリット |
---|---|
UI実装の圧倒的な高速化 | 生成されたコードの微調整は必要 |
デザインとコードの一貫性向上 | 複雑なビジネスロジックは生成できない |
手作業によるコーディングミスの削減 | Figmaのレイヤー構造にコードの品質が依存する |
開発者はロジックの実装に集中可能 | ローカルサーバーを常に起動しておく必要がある |
デザイントークンの自動適用 | FigmaのDev Modeが有料プランの機能である点 |
よくある質問
Q この機能は無料で使えますか
FigmaのDev Mode自体は、有料プラン(Standard, Professional, Organization)の機能となっている。また、Claude Codeの利用にも別途料金が必要になる点は留意すべきだ。しかし、その投資に見合うだけの生産性向上は期待できるはず。
Q どんな技術スタックで使えますか
非常に柔軟性が高い。プロンプトで指示すれば、React, Vue, Svelte, Solid.jsといった主要なフロントエンドフレームワークに対応したコードを生成できる。HTMLとCSSだけのシンプルな出力ももちろん可能だ。
Q セキュリティは問題ないですか
通信は自分のPC内のローカル環境(127.0.0.1)で完結している。そのため、デザインデータがインターネットを経由して外部に送信されることはなく、セキュリティ上のリスクは低いと言える
参考
Guide to the Dev Mode MCP Server
終わりに
設計と実装の境界線が、今まさに溶け出している。FigmaとAIの連携は、その象徴的な出来事だ。個人開発者こそ、こうした最先端のワークフローを積極的に取り入れ、大手企業やチーム開発と同じ、あるいはそれ以上のスピードでプロダクトを世に送り出すべき
ツールに「使われる」のではなく、ツールを「使いこなす」。それが、これからの時代の開発者にとって、新しい価値創造の源泉となる。この連携は、そのための大きな一歩になるはず