技術選定ミスが招く“コスト地獄”完全ガイド
個人開発を始めるとき、「構成がシンプルで導入が楽」な技術を選びがちですよね。
よく分からないからAI に作ってもらおう → できた! → 公開!(危険)
Supabase Strage(画像ストレージ)とか、Clerk(認証、決済)とか、Resend(メール一斉送信)とか。めっちゃシステムを簡単に導入できます。本当に楽です。
でも、その楽さの裏には、将来的なコスト爆増リスクが潜んでいるかもしれないよ、という話をします。今回の投稿では、よくある技術選定ミスとその代償を「コスト地獄」として一覧化し、どこで詰まるか・どう備えるかを整理しました。
お知らせ
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それでは、以下は、サービスにおける“初期構成の落とし穴”チェックリスト。導入が簡単に見える技術こそ、移行や運用コストに要注意
Tier別 技術選定の落とし穴とその代償
↓の中で、初心者の個人開発者が特にやらかしてそうなものは、画像ストレージ選定ミスと商標登録のし忘れ。これ忘れると、とんでもないことになるからね?
こちらは、X で投稿した内容。
Tier | 地獄名 | 技術選定前にチェックする内容 |
---|---|---|
SSS | 画像ストレージ | リサイズ漏れやCDN未接続により転送量が爆増し、無料枠を超えて高額請求に。移行時はURL構造変更が必要で工数も大きい |
SSS | 商標登録 | 後出しでの商標トラブルによりリブランド費・ドメイン変更・ロゴ再制作などが発生。初期の弁理士相談が最安ルート |
SS | 認証 | 外部サービス依存で移行が難しく、課金体系やUI制限が将来的な足かせに。トラブル時のリカバリにも高コスト |
SS | サブスク | 無料で使えると思っていたが、Webhook処理や課金ロジックの設計ミスで請求事故→返金対応や信頼失墜による損失 |
SS | DB | 想定外のアクセス増で無料枠を一気に超え、段階課金で急激な請求が発生。スロット数や転送量の上限仕様も確認を |
SS | メール送信 | 認証設定不備で迷惑メール扱い→配信失敗が常態化。設定代行や配信サービス移行時の費用が地味に高い |
S | 画像最適化 | 自前で変換処理を組むと脆弱性・パフォーマンス面で負債化。CDN連携の有無や無料枠を見落とすと課金がかさむ |
S | CDN | CDNなし運用は後で置換が難しく、ページ表示速度と転送費の両面で損。初期から導入しないとコスト最適化が困難 |
A | 監視 | エラー通知や稼働監視がないと、不具合に気づかず機会損失。導入を後回しにするとツール選定・設計のやり直しで二重コストに |
A | ドメイン | 取得費は安くても、更新料の値上げ・移管制限・廃止リスクで長期的に高くつくことも。更新忘れはサービス全停止につながる |
EX | マーケ費 | ノープランでのリリースは見られないまま終わる。広告・広報・初期のコミュニティ施策にゼロ円は“後から”では取り戻せない損失になる |
※あくまで「コスト観点」のチェックリストです。構成の最適解はプロダクトやフェーズ次第
で、こちらが少し改良を加えた v2。
Tier | 地獄名 | 技術選定前にチェックする内容 |
---|---|---|
SSS | 画像ストレージ | CDN未接続やリサイズ漏れで転送量が爆増し、無料枠超過→高額請求。URL構造変更が必要で移行工数も大きい。 |
SSS | 商標登録 | ロゴ・ドメイン・ブランドを後から変更する羽目に。弁理士相談を初期に済ませるだけで数十万の損失を回避可能。 |
SS | 認証 | 外部サービスに依存しすぎると、UI制限や移行困難が発生。トラブル時の復旧・柔軟性の欠如も高コスト要因に。 |
SS | サブスク | Webhook処理・課金設計ミスで請求事故→返金・謝罪・信頼低下。Stripeや課金周りは要テスト&レビュー。 |
SS | DB | 無料枠でもスロット数や帯域に注意。アクセス急増で段階課金が一気に跳ね上がることも。使用量制限を必ず確認すべき。 |
SS | メール送信 | 認証設定(SPF/DKIM/DMARC)をミスると迷惑メール扱いに。ResendやSendGridでも設定ミス→配信失敗が起こりがち。 |
S | 画像最適化 | 自前実装は脆弱性とパフォーマンス問題の温床。Cloudflare Images等の自動変換サービスで解決すべき。 |
S | CDN | 後から導入しようとするとURL変更・設定変更の嵐に。初期からCDNをかませておくのがトラブル最小化の鍵。 |
A | 監視 | Sentry等の導入を後回しにすると、いざという時の検知が遅れ、損失に。通知設計・ログ保管も初期段階から設計すべき。 |
A | ドメイン | .devや.ioは更新料が高騰しやすく、移管・廃止リスクも。Cloudflare Registrarなどで安定・長期運用を見越した取得が重要。 |
EX | マーケ費 | 「良いものを作れば広まる」は幻想。広告費ゼロ・リリース後ノープランだと誰にも見られずに終わる。最低限の広報は初期投資。 |
この表見て、ドキドキしたかな?心当たりがあるなら、すぐに対策したほうがいいよ。
技術選定は、「いま使えるか」ではなく「数ヶ月後・1年後にどうなるか」で考えるべき。以下のような構成は、最初は無料・簡単に見えても、後から地獄に
- 画像系:トラフィック爆増でCDN未接続が致命傷に
- 認証系:カスタマイズ不可なサービスを選んでしまうとUI制約地獄へ
- 商標:あとから名前変更 → 検索順位・リンク全崩壊
- サブスク:決済事故は信頼を一発で失う
それでは、初期構成を甘くすると、なぜ後で詰んでしまうのか解説。
画像ストレージ
リサイズ漏れやCDN未接続で転送量が爆増し、無料枠を超えて高額課金。URL変更が必要になると移行コストも激増。「とりあえず使える」は一番危険。最初にCloudflare ImagesやCDN連携を含めた構成で設計しておかないと、あとで詰みます。
例えば、Supabase Storage を使ってる場合、画像転送量が増えると CDN なしでそのまま S3 経由で配信され、帯域課金が跳ね上がります。しかもリサイズやWebP変換は自前で実装が必要で、セキュリティやパフォーマンスの課題も抱えがち。
Cloudflare Images なら URL 一発でサイズ指定・自動最適化・WebP変換・キャッシュが効き、コストと保守の両面で圧倒的に楽になります。初期構成でこれを選べるかが分かれ道。
商標登録
プロダクト名を後から変えることほど辛いものはない。商標トラブルでロゴ・ドメイン・リンク・信頼が全損します。初期に弁理士へ相談し、名前の空き状況を確認するだけで数十万円の損害を防げる。「あとで考える」は命取り。
実務的におすすめの優先順位
文字商標(サービス名) → 最優先。note、BASEなど、サービス名が広がる前に確保すべき。
結合商標(ロゴ+名前) → ロゴごと使われたくない場合におすすめ。ただし変更に弱い。
図形商標(ロゴ単体) → Appleのリンゴマークのように「象徴としてのロゴ」を守りたい場合。
認証
便利そうな認証サービスを選んだはいいが、UI制限やロゴ表示、カスタマイズ不可が足かせに。移行しようにもユーザー情報がロックインされていて地獄。RLSやセッション管理も含めて“逃げられる設計”を初期から考えておくべき。
サブスク
「Stripe簡単!」と思って実装したら、Webhook処理ミスで二重請求・決済失敗・返金対応。信頼を一瞬で失います。決済周りは最初から“本番想定”で構築・テスト・監視まで入れるべき。
DB
無料だからと甘く見ると、アクセス増でスロット・帯域制限に引っかかり地獄へ。段階課金で青天井、PostgreSQL移行も地獄。SupabaseやD1も構成次第ではすぐ限界が来るので要注意。
メール送信
SPF/DKIM/DMARC未設定で迷惑メール行き→開封されない→ユーザーからクレーム。配信失敗が続くとドメイン評価も落ちます。認証設定とバウンス監視は初期構成に組み込むべき。
画像最適化
自前で画像変換やWebP対応を組むと、バグ・脆弱性・パフォーマンス劣化の三重苦に。Cloudflare Imagesのような最適化付きサービスを使わないと、後から変えるのが超面倒。
CDN
導入を後回しにすると、URL構成変更・キャッシュ制御など修正箇所が雪だるま式に増えます。初期構成でCDNを挟んでおくだけで速度・セキュリティ・コストのすべてが安定化します。
監視
エラー通知なしで気づかず数日放置→ユーザー離脱。SentryやDatadogの初期導入をケチると“監視できないプロダクト”になります。最低限のアラートとログ収集は最初から必要です。
ドメイン
.ioや.devは取得は簡単でも、更新料が高騰しがち。移管不可やドメイン廃止リスクも。Cloudflare Registrarで管理すると安くて安全ですが、“更新忘れ=サービス停止”は常に頭に。
マーケ費
「いいものを作れば広がる」は幻想。初期の露出ゼロ=無だったことになる。広告・SNS・はてブ施策など、最低限のマーケ予算と施策は“リリース前”から設計しておかないと後戻りできません。
解決策:選定基準とチェックリスト
- 無料枠の上限を数値で把握する(帯域・容量・APIコール)
- 移行難易度が高いもの(画像・認証・DB)は最初に慎重に選ぶ
- ドメインや商標は“後回しにできない”と心得る
- CDNと監視は“初期導入こそ安い”という逆説を意識する
おわりに
「とりあえず無料で動く構成」に飛びつく前に、“後から地獄を見る構成”になっていないか一度立ち止まって確認してみてください。今回のリストはあくまで一例ですが、あなたのプロダクトがスケールしたときにコスト地獄で詰まらないよう、構成力と設計力を武器にしていきましょう。